竹本住大夫文化功労者顕彰記念公演(25日まで)です。2部の「桜鍔恨鮫鞘(さくらつばうらみのさめざや)」と「妹背山女庭訓(いもせやまおんなていきん)」を見てきました。
「桜鍔」は通称「鰻谷(うなぎだに)」。今は長堀通のひとつ南、鰻谷が舞台です。元武士の亭主が主家のための金の工面に苦労しているのを知った女房が、娘もいるのに離縁し、再婚して金を調達しようとし、亭主に心ならぬ愛想づかし。逆上した亭主が、妻とその母を斬殺する悲劇です。文字が書けない妻が、遺言を娘に口述して暗記させている、というのがユニークな着想。
「妹背山」は「道行」から「金殿」まで。「大化の改新」の蘇我入鹿暗殺がテーマの壮大な歴史劇ですが、今回は、一人の男(人形ですからイケメンの極致)を熱愛する二人の娘(町娘のお三輪と、高貴な橘姫)の情熱がほとばしるような舞台が眼目です。吉田簑助十八番のお三輪の狂わんばかりの恋情表現に、毎度のことながらうなってしまいます。咲大夫・燕二郎のコンビも上々。86歳、吉田玉男、今回も病欠を若手が懸命に埋めています。義太夫には「恋人」という語が再三出てきて、これが古い言葉だということがわかります。