書の国宝 墨蹟展/幻の芝川照吉コレクション展

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書の国宝 墨蹟展(5月28日まで、大阪市立美術館)は、歯が立ちませんでした。「墨蹟」とは、禅宗の高僧が遺した書。国宝15、重要文化財120という、系統的で大がかりな展覧会ですが、中国や日本の名だたる高僧といっても、ほとんどなじみがなく、書はすべて漢文。展示には「解字」もなく、読めません。読めたとしても難しい禅語では、チンプンカンプン。おまけに「図録」は5000円もするので、お手上げ。禅宗では、師の臨終の遺書「遺偈(いげ)」と肖像画「頂相(ちんぞう)」によって、後継の弟子に法灯を伝えるそうです。ですからこれらの墨蹟は、その宗派にとって何にもまさる宝。のちには茶室に欠かせないものとなり、信長や秀吉など時の権力者が秘蔵したものもあります。死に臨み、最後の力をふりしぼって書かれた書は、字も乱れてしまったものもありますが、迫力満点です。でも、禅にも書にも知識のない私などには、しょせん猫に小判の展覧会でした。
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同時開催の幻の芝川照吉コレクション展のほうは、とても親しみやすい展覧会です。芝川照吉は文楽の5世竹本弥大夫の子。生家はもと大阪・北堀江の茶屋「木谷楼」。弟は浄瑠璃研究家の木谷蓬吟、蓬吟の妻は日本画家の木谷千種です。照吉が養子で入った芝川商店は、「羅紗王」といわれたほどの大きな「ラシャ屋」でした。仕事で東京に出た照吉は、当時の美術家と親交を深め、その有力なパトロンとなり、独自の1000点におよぶコレクションを作り上げました。しかし、照吉が52歳で没した2年後の大正14年、関東大震災でコレクションは一部を焼失、そのあとの売り立てで、ほとんどが散逸、戦災にも遭いました。この展覧会はそれらをふたたび集めて、コレクションのおもかげを再現しようとしたものです。青木繁、坂本繁二郎、岸田劉生、石井柏亭、石井鶴三、バーナード・リーチ、富本憲吉、河合卯之助、それに藤井達吉の工芸作品がたくさん並べられています。この展覧会だけなら300円で見ることができます。
by yagi070 | 2006-04-20 14:13 | 展覧会
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