安宅英一の眼展

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安宅産業会長だった安宅英一が戦後集めた朝鮮・中国陶器のコレクションは、昭和52年安宅産業が石油事業の失敗から伊藤忠商事に吸収されると、債権者の住友銀行の手に渡り、やがて住友グループがこれを大阪市に寄贈して、大阪市立東洋陶磁美術館が開館してから、25年。今回はその記念展です(9月30日まで)。コレクションに見られる安宅の審美眼は実にしっかりしていて、今ではこの美術館を見るために外国から大阪にやって来る人も少なくありません。
私は何度も見ているので、なじみのものばかり。通りかかりにフラリと入ると、「おお、まだ元気でいたなあ」などと、作品の一つ一つに心の中で声をかけながら見ています。でも、ほんとうは、あちらのほうが私を見て「あんた、まだ元気で生きていたのか。また、近いうちにおいでよ」と言っているのかもしれませんね。何しろ、これらの名品は、私よりずっと早くこの世に現れ、私が死んだあとも、ずっと存在しつづけるのですから、どだい格が違い過ぎます。
安宅の美術担当秘書の仕事をしていた、伊藤郁太郎館長が、苦労して作品を手に入れたときのエピソードを書いているのが、とてもおもしろい。今回の図録には載っていませんが、作家の立原正秋が、まだコレクションの一部が安宅本社の地下金庫に保管されていたころ、どうしても見たいというので、有名な「秋草の壷」を出したところ、その場に座り込み、抱きかかえて泣いた、という話も聞いたことがあります。
by yagi070 | 2007-07-07 17:57 | 展覧会
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